1958年にダブリンに生まれたヒュー・ティニーは、2つの国際コンクール、イタリアの1983年ポッツォーリ、スペインの1984年パロマ・オシェア、で1位を受賞したことによって、最初の国際的な認知を得た。それ以来、彼はヨーロッパ各地、米国、ラテンアメリカ、そして極東など35カ国で演奏してきた。音楽祭への参加により、彼はベルギー、チェコ共和国、スペイン、フィンランド、フランス、日本、そして米国で演奏を行った。また彼の演奏は、15カ国以上で、ラジオ又はテレビで放送されている。

1987年に、彼はリーズ国際ピアノコンクールで入賞した。2年後に彼はBBC「プロムス」で、ベートーヴェンの『皇帝』協奏曲をBBCウェールズ・ナショナル管弦楽団と演奏し、デビューを飾った。その後、ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団、フィルハーモニア管弦楽団、ロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団、バーミンガム市交響楽団、ロイヤル・リヴァプール・フィルハーモニー管弦楽団、ロイヤル・スコティッシュ・ナショナル管弦楽団、BBCウェールズ・ナショナル管弦楽団などの一流オーケストラとの共演など、英国での多忙なキャリアがスタートした。彼は、アイルランドのRTÉ（アイルランドの公共放送局）国立交響楽団で、40年間ソロ奏者を定期的に務めており、1993年の英国ツアーに参加したり、1998年にアムステルダムのコンセルトヘボウで共演したりしている。 加えて彼は、RTEコンサート・オーケストラ、アイルランド室内管弦楽団、アルスター管弦楽団などアイルランドの他のオーケストラとも頻繁に共演している。共演した指揮者には、サイモン・ラトル、ノーマン・デル・マー、ヤン・パスカル・トルトゥリエ、リボール・ペシェク、イェジー・マクシミウク、ヤツェク・カスプシク、コールマン・ピアース、ブライデン・トムソン、プリンシアス・オ・デュイン、アレクサンドル・アニシモフ、ゲルハルト・マークソン、デイヴィッド・ブロフィー、ギャヴィン・マロニー、ティエリー・フィッシャー、ケネス・モンゴメリー、ハイメ・マルティンが含まれる。彼は、60以上の異なる協奏曲を演奏した経験がある。

ヒュー・ティニーの過去35年に及ぶ、アイルランドのコンサートライフへの貢献は重要である。ハイライトには、ダブリンのアイルランド現代美術館（IMMA）で開催された1991年のショパン・プラス リサイタルシリーズ、コークで行われた同様のシリーズ、シューベルトの後期ソナタに焦点を置いた、1995年にIMMAで開催されたもう1つの主要なリサイタルシリーズがある。彼は1998年に、モーツァルトのオリジナルのソロピアノ協奏曲全21曲を演奏するという3年がかりのプロジェクトを、ダブリンのナショナル・コンサート・ホールでサンタ・チェチーリア国立アカデミー管弦楽団と共に完了した。1999年には、ベートーヴェン協奏曲全集を演奏した。これらの全てのシリーズは、アイルランドの批評家や聴衆から最高の称賛を受けた。 彼は、ベートーヴェンのみのソナタリサイタルをロイヤルダブリン協会で6回行い（2000年から2002年）、後に他の会場で、ベートーヴェンのソナタ全32曲を演奏した。加えて、彼は2004年に、フィリップ・カッサールとジョアンナ・マグレガーと共にバントリー・ハウスで、ベートーヴェンのソナタ全集を演奏した。2003年の1月に、NCH/アイリッシュ・タイムズ・セレブリティ・シリーズの一部として、彼はダブリンのナショナル・コンサート・ホールで売り切れのリサイタルを行った。2008年の11月に、ロイヤルダブリン協会の招待で、彼は自身の50歳の誕生日を記念して、チャンバー・ミュージック・ウィークエンドのキューレーションをし、演奏を行なった。

室内楽のパートナーには、ボロディン、東京、ヴァンブラ、コン・テンポ、及びフォーグラー四重奏団、スティーヴン・イッサーリス、ジュリアン・ラクリン、ヨルグ・ヴィットマン、バーナデット・グリーヴィ、タラ・エロート、キャサリーン・レオナルド、ジョン・フィヌケーン、キャロル・マクゴネル、フィンヒン・ コリンズ、ジョン・オコーナーなどがいる。彼は、バントリーのウエスト・コーク室内楽音楽祭で、1997年から2000年まで毎年、2003年、2007年、2010年、そして2012年に再び演奏した。現代アイルランド音楽への彼の関心は、レイモンド・ディーン及びイアン・ウィルソンから依頼された新しい作品へと繋がった。

彼は1999年に、ウィルソンの『リーメナ』を、アイルランドの8回のコンサートから成るツアーで、アイルランド室内管弦楽団と初演した。彼は2006年と2007年に、アイルランドのアーツ・カウンシルより2年間の奨学金を授与され、アイルランド及び国際的な現代ピアノ音楽の研究、演奏、そして録音を行った。2010年の秋に、アーツ・カウンシルの支援を受けて、彼はレイモンド・ディーンに、12曲からなる40分のセット『ノクチュアリ』を書いてもらうよう依頼し、それらは2011年と2013年のコンサートで初演された。 2010年のコンサートには、ショスタコーヴィチとモーツァルトの協奏曲のRTÉ国立交響楽団との共演、カメラータ・パシフィカ室内楽アンサンブルとのカリフォルニアツアー、コークでのアロイス・フライシュマン生誕100周年コンサート、そしてIMMAでの展覧会「Vertical Thoughts – Morton Feldman and the Visual Arts」の一環として、米国の作曲家モートン・フェルドマンの90分ソロ曲『トライアディック・メモリーズ』（1981）のアイルランドでの初演がある。

2011年にヒューは、ダブリンのナショナル・コンサート・ホールとアイルランドの他の場所で、3つのソロリサイタルから成る彼のヨーロピアン・ピアノ・マスターワークス・シリーズを演奏した。2012年に、彼はアカデミー室内管弦楽団と共に中国をツアーし、ジョン・ケージ生誕100周年を記念してアイルランドでリサイタルを開催した。 2012年の秋には、キャサリーン・レオナルドとのアイルランドツアー、アカデミー室内管弦楽団とのアイルランドツアー、及びパリそしてニューヨークでのコンサートを行った。その後数年のハイライトには、2013年にダブリンのナショナル・コンサート・ホールで行ったヨーロピアン・マスターワークス・シリーズのキューレーション及び演奏、2013年と2014年のさらなる中国ツアー、2013年から2019年までウエストポート音楽祭の共同監督及び演奏、2014年にキャサリン・レオナルドとナショナル・コンサート・ホールで行った、ベートーヴェンの『ヴァイオリン・ソナタ全集』の演奏、2014年及び2017年にアイルランドのアーツ・カウンセルによって支援されたアイルランドのデュオ・トリオ室内楽ツアー、ダブリンの1916年イースター蜂起以来100年間の作曲を祝った、回顧フェスティバル「Composing the Island」（2016年）での演奏及び録音が含まれる。

2018年11月28日に、彼の60歳の誕生日を迎えたことを記念して、ヒューはいくつかの祝賀行事を行った。11月にアイルランド及び北アイルランドの12カ所でリサイタルツアーをし、ベートーヴェンの『皇帝』協奏曲をRTÉ国立交響楽団と、売り切れのダブリンのナショナル・コンサート・ホール（NCH）で演奏した。2019年は、ダブリンとマドリードでレイモンド・ディーンの『ノクチュアリ』の演奏を行った。2019年後半と2020年前半に、彼はNCHで6つのコンサートから成る室内楽シリーズ「Beethoven – his Predecessors and Successors（ベートーベン – 彼の前任者と後継者）」をキューレーションし演奏したが、最後のコンサートは、2020年のパンデミックのためその年末まで延期された。 パンデミック以来、彼はリムリック、ウェストポート、そしてダブリン城で開催された室内楽音楽祭で演奏している。2022年初頭に、ヒューはダブリンのNCHで、首席指揮者ハイメ・マルティン率いるRTÉ国立交響楽団と共に、モーツァルトの『ピアノ協奏曲第24番 ハ短調 K.491』を演奏した。ヒュー・ティニーのディスコグラフィーには、リストのリサイタル（デッカ）、リストの『詩的で宗教的な調べ』（Meridian）、メンデルスゾーンの『2台のピアノのための協奏曲』をピアニスト、ベンジャミン・フリスと共演（ナクソス・レーベル）、アロイス・フレイシュマンの『ピアノ五重奏曲』をRTÉヴァンブラ四重奏団と共演（Marco Polo）、バーナデット・グリーヴィと共演したアイルランドの歌集（Marco Polo）が含まれる。彼は、レイモンド・ディーンのソロピアノのための『After-Pieces』を、ディーンの作品集CD（Black Box）のために録音した。ピアノソロ、及びイアン・ウィルソン作曲のヴァイオリン/ピアノデュオ作品のキャサリーン・レオナルドとの共演を収録した彼のCDは、2004年にRiverrunよりリリースされ、絶賛を得た。同様に、RTÉ Lyric FMレーベルに録音された、キャサリーンとヒューのベートーヴェンCD（『クロイツェル』及び『春』を含む）は、2007年のリリース以来、広く賞賛されている。イアン・ウィルソンの『Limena』（ベオグラード・ストリングスと共演）は、2009年にRiverrunのCD『Sullen Earth』でリリースされ、イアン・ウィルソンのもう1つの作品『Re:Play』（RTÉヴァンブラ四重奏団らと共演）は2011年にRiverrunよりリリースされた。

バッハ、シューベルト、ドビュッシー、トム・ジョンソン、そしてジェラルド・バリーの作品からなる彼のソロCD『Hugh Tinney – A Portrait』は、RTÉ Lyric FMレーベルより2013年初頭にリリースされた。レイモンド・ディーンの『ノクチュアリ』は、世界最初で唯一のデジタルクラシック音楽レーベル、Resonus Classicsから、2014年6月にリリースされた。 2000年から2006年まで、ヒュー・ティニーは、Great Irish Houses festivalで芸術音楽監督を務めた。2013年から2019年まで、彼とキャサリーン・レオナルドは、ウェストポート室内音楽祭の共同芸術監督を務めた。彼はロイヤル・アイリッシュ・アカデミー・オブ・ミュージックで教授職についており、サンタンデールやダブリンを含むいくつかの国際ピアノコンクールで審査員を務めている。 彼は、ダブリン国際ピアノコンクール及びオペラ・シアター・カンパニー（アイリッシュ・ナショナル・オペラの前身）で理事を務めた。2003年に彼は、RTÉテレビのショーン・オモーダ監督のドキュメンタリー『PIANO – The King of Instruments』に、首席ピアニストとして参加した。2007 年 9 月、ヒューはアイルランド国立大学から音楽の名誉博士号を授与された。