ゲオルク・フリードリヒ・ヘンデル（1685-1759）は、オペラやオラトリオで有名なバロック音楽の作曲家である。プロイセン帝国領のハレに生まれたヘンデルは、当初父親から音楽の道に進むことを反対された。しかし、教会でオルガンを演奏していた少年は、作曲家フリードリヒ・ヴィルヘルム・ツァハウに見出され、音楽の手ほどきを受けることになる。一時は法律の道に進もうとしたが、ヘンデルは本格的に音楽に打ち込み、オルガニストとなり、後にハンブルク歌劇場のヴァイオリニストとなった。 
 
ヘンデルの作曲家としての出発点は、オペラの作曲にあった。彼はハンブルクで最初のオペラ『アルミーラ』を1705年に上演し、大成功を収めた。その後イタリアに移り、カンタータやオラトリオとともにイタリア・オペラの作曲を始めた。やがて、イタリア・オペラの人気がイギリスでも高まり、1710年にはロンドンに移り、ロンドン初のオリジナルのイタリア・オペラ『リナルド』を初演した。その後、数十年にわたり、ヘンデルは40以上のオペラを作曲し、いくつかの歌劇場（うち3つは自ら経営）をまたいで活躍した。彼の最も有名なオペラには、『アルチーナ』、『テレプシコーレ』、『エジプト王妃ベレニーチェ』、『セルセ』などがある。しかし、やがてロンドンではイタリア・オペラが衰退し始め、ヘンデルはこのジャンルの作曲を断念することになる。 
 
代わりに、ヘンデルは、舞台演出や衣装を伴わない、オーケストラと声楽のための大規模な作品であるオラトリオの作曲に移行し、それによって制作費を抑えることができた。ヘンデルは25曲以上のオラトリオを作曲し、イギリスの聴衆に好評を博した。とりわけ有名なのは、1742年の『メサイア』である。巨大で壮大なこの作品は、当初ダブリンでチャリティ・イベントとして初演された。イギリスではすぐには成功に至らなかったが、現在では演奏される頻度が最も高い曲の一つに成長した。『メサイア』の直後、ヘンデルは有名なオラトリオ『サムソン』を初演した。 
 
ヘンデルは多作な作曲家で、オペラ、オラトリオ、カンタータ、合奏協奏曲、オルガン協奏曲、小規模の室内楽グループやソリストのための作品など、実に多岐にわたる作品を生み出した。その他の有名な作品には、『水上の音楽』（1717年）、『王宮の花火の音楽』（1749年）などがある。作曲家は1759年にこの世を去ったが、現在でもバロック音楽の先駆者として、またオペラやオラトリオの第一人者として讃えられている。